「猫は気まぐれなので犬と違って忠実ではない」とか、「感情がないから傷つくことはない」という人がいます。以前は私もその一人でした。
そう、ある一匹の猫に出会うまでは。
フナとの出会い
その猫との出会いは、以前住んでいたマンションでのことです。引っ越して間もない頃、汚らしい一匹の野良猫がベランダから悲しそうに我が家の窓を覗きこんでいることがよくありました。窓を開けると不思議と逃げることもなくとても人懐っこい子であり、薄汚れていたものの明らかに以前誰かに飼われていた形跡がありました。
当時住んでいた船橋に野良猫は他にもたくさんいたのですが、そんなわけで私たち夫婦はその猫に注目するようになったのです。
誰かを待ち続ける不思議な猫
ほぼ毎日同じ時刻に現れては深夜まで誰かを待ち続ける不思議な猫
その猫は不思議と夕方になると毎日欠かさずマンションの入り口に現れては、深夜まで微動だにせず何時間も座っていました。まるでそれは、誰かの帰宅をずっと待っているようでした。
どんなに寒い日でも、冷たい雨が降る日でも濡れながら誰かを待ち続けていました。
猫というものは濡れることが大嫌いなはずです。それなのにそんなことはおかまいなしという感じでしたね。
そして信じられないことですが、涙を流していたのです。目やになのかもしれませんが泣いているようにも見えました。
私たちはマンションの一階に住んでいて玄関先には防犯カメラを設置していたのですが、そのカメラで確認したところなんとその猫は3時間以上も毎日同じ場所で座り続けていたのです!
さすがにこれほど毎日同じ場所にいるとマンションの住人のなかではちょっとした名物猫になり、皆がなでたり餌をあげたりするようになりました。いつもお腹を空かせていて、もらった餌にがっついてはいましたがその猫はなぜか誰かについていくことはありませんでした。このようなことが半年近く続きました。
ここは俺の家だ!
その猫が入ろうとするのは決まって我が家のドアでした。
力ずくでも入ってこようとするのです。野良猫は警戒心が強いですからそういう猫はまずいません。
そこで私と主人はある仮説を立てました。
恐らく、この猫はマンションのこの私たちの部屋で飼われていたのだろう、私たちの部屋に以前の飼い主が住んでいて、引っ越した時にこの猫を捨てて行ったのだろうと。
窓から覗いていたのも、久しぶりに元我が家に明かりがついたので「元飼い主が帰ってきたのかな?」と思ったからなのかもしれません。
とても汚い猫で湿疹も酷かったので最初は追い出していたのですが、すると猫はシャーシャーいってとても怒りました。「ここは俺のうちなんだ!」と言わんばかりに。
そしてある時、主人が根負けし猫を家に入れてしまいました。
自分を捨てた飼い主を待ち続けていた姿に動かされたというのもあります。
その猫は我が家の構造を知っているようで、慣れた感じできょろきょろしたり迷ったりすることもなく部屋から部屋へ我が家を移動していました。
子供のいない夫婦なのでこれも何かの縁かもしれない、と思い私たちはこの猫を飼うことにしました。
それからは動物病院で病気を治療したり、ダニを駆除したり、去勢手術をしたりいろいろありましたが船橋で拾ったのでフナと名付け、今では我が家の家族です。美猫ではありませんがとても愛嬌のある猫です。
猫の快適な環境ために引っ越しもしました。湿疹は治り室内飼いをしているので、とてもキレイな猫になりました。
最後に
「猫なんて気まぐれ、餌をあげる人についていく生き物、捨てられたって傷つかない」と思っている人はフナのことを知って欲しいと思います。
飼い猫は野生で生きていくことが難しいのです。事実、フナは地元の野良猫と上手くやっていけず喧嘩ばかり怪我ばかりしていつも一匹で浮いていました。自力で餌を得ることもできませんでした。
安易に猫を捨てる人がいなくなることを願ってやみません。
そして今は
弟ができて二匹になりました。主人が拾ってきて飼い猫になったソラという猫と仲良く暮らしています。
一度捨てられたトラウマなのかお留守番ができず、一人にするとパニックを起こしたり常に体の一部を私たちに密着させていないといられないなど過度に甘えん坊ですが、弟ができて少し落ち着きました。
Writing ゆうきん
趣味はアクセサリー収集、料理、ソシャゲー、ボディボードサーフィンです。
海の近くに住んでいるのでこのシーズンでも真冬でも地元サーファーに紛れウェットスーツでガンガン海に入っちゃいます!
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